【有珠山金毘羅火口災害遺構散策路① 安らぎの家】 2000年4月1日に、洞爺湖温泉街を襲った噴火と、熱泥流の被害を今に留める施設

忙しかったボランティアも終わり、一カ月ぶりに「五泊六日北海道旅行記」再開です!

今日からしばらく、2000年に起きた有珠山(うすざん)ふもとの噴火による、災害遺構を紹介します。

→→2018年5泊6日北海道旅行記の行程はこちら・・・5泊6日で36か所を巡りました。

旅行記

有珠山金毘羅火口災害遺構散策路(うすざんこんぴらかこう さいがいいこうさんさくろ)は、前回の【洞爺湖サミット記念館】から徒歩10分くらいのところにあります。

 

 

洞爺湖(とうやこ)自体が過去に大噴火を起こしてできたくぼみに水が溜まってできた「カルデラ湖」で、南側は今も活発に火山活動を続けているエリアです。

中でも有名なのが 【有珠山(うすざん)。赤色マーク】と、昭和新山(しょうわしんざん。ピンク色マーク)です。

今日紹介する「有珠山金毘羅火口群(オレンジ色マーク)」と、後で書く「有珠山西山山麓火口(黄色マーク)」は、2000年3月31日と、翌日の4月1日に、有珠山の西側で起こった噴火で、この二つは「噴火災害遺構散策路」として整備されており、無料で見学できます。

 

 

有珠山は江戸時代から9回も噴火している活火山で、火山活動を24時間体制で常時観測しており(日本には111の活火山があり、このうち50が常時観測)、2000年3月27日から周辺で群発地震が発生。有珠山の活動が再び活発化してきたことを知り、1万5815人が避難しました。

 

有感地震が減少してきた3月31日の午後1時7分に、有珠山西山山麓(先ほどのマップの黄色マーク)でマグマ水蒸気爆発が発生。

この時の噴煙は高度2500mまで上昇し、洞爺湖畔に火山灰を降らせました。この災害遺構が「有珠山西山山麓火口散策路」です。

 

 

今日紹介する「有珠山金毘羅(こんぴら)火山災害遺構散策路」は、有珠山西山山麓噴火翌日、2000年4月1日午前11時40分ごろに起こったもの。

洞爺湖温泉街の、さらにすぐ近くでの噴火でした!

 

2000年4月1日の、有珠山金毘羅火口噴火時の写真。

この距離での噴火は恐ろしいですね・・・。

 

 

二日連続でいきなり噴火口ができ、その火口数は60ヵ所以上にもなり、周辺は、噴石、降灰、地殻変動(隆起、地割れ)、熱泥流被害に見舞われました。

 

大災害にもなりえたわけですが、先ほども書いたように火山活動の変化を常時観測し、関係機関が迅速に動いたため、事前に全ての住民は避難でき、負傷者はゼロでした。

 

 

2000年4月1日に起こった金毘羅山での噴火口は有珠山(うすざん)から名前をとって、「有くん火口」と、「珠ちゃん火口」と名付けられました。

有くん火口は2000年の噴火で金毘羅山周辺にできた最大の火口で直径は200mあります。

私達は、有くん火口、珠ちゃん火口までは行かず(遠い! 入り口から1km、40分ほどかかるので時間的に無理だった)、その手前の「桜ヶ丘団地跡」、「やすらぎの家跡」、流された「木の実橋」を見に行きました。

 

 

前回の【洞爺湖サミット記念館】から、水のない堀沿いに進み、北へ。

この水の無い堀は、噴火の際の泥流対策に作られたもので、洞爺湖温泉街には3つの人工水路が造られています。

 

 

洞爺湖ビジターセンター火山科学館のすぐ近くに、有珠山金毘羅火口災害遺構散策路の入り口があります。

 

入場料金は無料ですが、茶色い建物(受付所)に「施設維持協力金」の募金箱があったので、数百円入れてから入りました。

 

入場時間は7時から18時。10月と11月は17時まで。
4月20日から11月10日までが開放期間で、それ以外の時期は入れませんのでご注意を。

 

 

災害時は泥流でドロドロだったでしょうが、あれから18年も経ち、現在は奇麗に整備されています。

北海道の形に「I ♡ Toya」の文字、美しい花を咲かせるアジサイや野花。

写真右に見えるのが、泥流被害を受けた【桜ヶ丘団地】です。

 

 

有珠山金毘羅火口災害遺構散策路の見学マップ。

まずは、手前にある「安らぎの家」から見ることにしました。

 

 

安らぎの家。

ネーミングからして老人ホームかなぁと思ったのですが、昭和63年に立てられた町営温泉浴場です。

2000年噴火の前年に改修したばかりでしたが、2000年4月1日の有珠山金毘羅山噴火の噴出物が熱泥流となり、流路工(先ほどの写真にあった水の無い堀)に流れたものの、数日後にはあふれ出し、やすらぎの家は熱泥流に襲われ、1m程埋もれてしまいました。

 

 

湯気がもくもく出ているのが熱泥流。

熱泥流とは、火山の水(温泉、温められた地下水)や雨水が、土砂や灰と混ざりあって、山の斜面を流れ下ってくるものです。熱を帯びていることが多いため「熱泥流」と呼びます。

 

 

安らぎの家は、散策できるように道路が整備されており、ぐるりと建物を一周することができます。

 

 

建物裏に落ちている石は、噴石。

 

 

 

みんながくつろいだ町営公衆浴場の一階奥まで熱泥流が入り込み、中はぐちゃぐちゃに。

下からは見えませんでしたが、屋根には多数の噴石の穴が開いているそうです。

 

事前に避難し、負傷者ゼロで、本当に良かったなぁと思います。

 

「命あっての物種」ですからねぇ・・・。

 

人命に勝るものなし!

 

 

 

近くには、「ゆかりの碑」がありました。

先ほどの町営公衆浴場「やすらぎの家」は1988年に建てられましたが、昭和18年に「北海道教員保養地(初期結核患者の保養施設)」があったのだそうです。

この石碑は、熱泥流の直撃を受けたものの、何の損傷も受けずに残ったそうです。

 

 

安らぎの家近くには、「木の実橋」があります。

これはここにあったのではなく、国道230号にかかっていた橋だったのですが、熱泥流により100mも流され、桜ヶ丘団地(安らぎの家の向かい側にある)の二階部分に激突し、ここで止まりました。

 

 


木の実橋だけではなく、こんぴら橋も流されたようです。

 

常時火山観測をし、事前に砂防施設と人工水路を作っていたため、被害を抑えられたようです。

 

砂防施設の役割と効果については、【イーハトーブ火山局】 「もしも岩手山(活火山)が噴火したら」に備えるの記事に書きましたので、実験装置をご覧ください。砂防施設があるのとないのとでは、大違いです。(なにより事前の避難が大事ですが)

 

続けて書くと長くなるので、桜ヶ丘団地跡(熱泥流で流された木の実橋がぶつかった団地)は、次の記事で紹介します。

 

次の記事はこちら

前回の続きで、北海道五泊六日旅行・2日目の紹介です。 今日紹介するのは、2000年4月1日に噴火した有珠山(うすざん)金毘羅(こんぴら)山の噴火遺構の一つ。 前回、熱泥流に襲われた【安らぎの家】を紹介しましたが、次は桜ヶ丘団地を[…]

 

(この旅行記は2018年です)

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交通アクセス

洞爺湖温泉バスターミナルから徒歩5分。洞爺湖ビジターセンター火山科学館の隣です。

料金

無料。施設維持協力金の募金箱があるので、可能であれば寄付をお願いいたします。

入場時間は7時から18時。10月と11月は17時まで。
4月20日から11月10日までが開放期間で、それ以外の時期は入れませんのでご注意を。

近くの宿泊施設

洞爺観光ホテル。全客室洞爺湖に面しています。洞窟風呂があり、夏季は部屋から花火が見えます。

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