【總禅寺(そうぜんじ)】 手塚治虫さんの墓所。「ガラスの地球を救え」

前回からの続きで、東京都豊島区巣鴨(すがも)の散歩記事です。

今日紹介するのは、漫画の神様「手塚治虫さん」のお墓。

本当は「東京都レジャー」の分類になるのですが、観光地ではないので、「良かったもの」カテゴリーに置きます。

手塚治虫さんの墓所へ

手塚治虫さんは兵庫県宝塚市出身ですが、お墓は東京都豊島区巣鴨(すがも)の摠禅寺(そうぜんじ)にあります。最寄り駅は新庚申塚(しんこうしんづか)駅。

→→【宝塚市立 手塚治虫記念館】の記事はこちら・・・生まれ育った宝塚市には記念館があります。

→→【高田馬場駅周辺、手塚治虫巡り】の記事はこちら・・・会社(手塚プロダクション)は東京都新宿区の高田馬場(たかだのばば)にあります。

 

 

摠禅寺(そうぜんじ)は松龍山とも号し、克永元年(1624年)今から370年ほど前に湯島の地に建立されました。
曹洞宗のお寺です。

写真のように真っ赤な門が目を引くので「赤門寺」とも呼ばれていたそうです。

 

赤門の掲示板には、

「この世には、雑用という用は一つもない。小さな努力で人は変わっていく」
とありました。

 

 

總禅寺の赤門をくぐって本堂に手を合わせ、辺りを見回したとき、墓地へと続くドアに、
檀家以外のお参りはご遠慮ください
との張り紙がありました。

 

お参りできるとは思っていませんでしたので、「ああ、やっぱりそうかぁ・・・」と思いました。

一人、納得して帰ろうとしたところ、お寺の方が私を見かけて声をかけてくださいました。

事情を話すと、鍵を開けて中に入れてくださいました。(感激! 外に居た時間は一分もなかったのですが、見つけて声をかけていただいた偶然に感謝感謝)

 

 

「手塚治虫さんのお墓に、お参りにこられる方、けっこう多いんですか?」
と尋ねたら、
「ええ、ファンの方はそれこそもう、ずっと来られています」
とのことでした。

 

お寺の方に線香に火をつけていただいて、水桶にお水を入れていただいて、手塚治虫さんのお墓へ案内して頂き、一人っきりに・・・。

お墓の左手側には、ブラックジャック、火の鳥、アトムなど手塚キャラの書かれた石碑があり、右側には「陽だまりの樹」で登場した曾祖父の手塚良仙さんのお墓がありました。

 

お線香をお供えして、合掌し、お水を墓石にかけさせていただきました。
そして、また合掌。

 

私はなぜか、胸がいっぱいになって、メソメソ泣いてしまいました。

 

私が手塚漫画に初めて出会ったのは、大阪の学校(臨床検査科・・・、病院で検査の仕事をする人)に通っていた時でした。

そこで医療倫理という授業があって、「ジョーを訪ねた男」という手塚治虫さんの漫画が授業材料に取り上げられたのです。

空気の底(秋田文庫)に、収録されています。

 

 

 

初めて手塚漫画を見てショックを受けました。

 

短いストーリーなのに、なんて重いテーマなんだろう・・・。

 

 

 

漫画の表現力ってスゴイ。

 

 

それから週に一度の書店通いが始まり、手塚さんの短編集、火の鳥、ブラックジャック、三つ目がとおる、シュマリ、どろろ、リボンの騎士、ジャングル大帝、アドルフに告ぐ・・・、などなどいろんな本を買い集めました。(なぜかしらアトムは持っていない・・・。図書館で借りて見ました)

 

中でも私のお気に入りは火の鳥 シリーズ

 

その中でも好きなキャラクターが、鳳凰編の我王(がおう)です。

生きる苦しみと怒りに悶える、壮絶なキャラクターです。

親から愛されて生を受けたものの、生後すぐに父親が転落死し、自身も大怪我を負い、片目がつぶれ、片腕が亡くなってしまいます。母親は頭が狂い、我王親子は村八分にされます。
長い長い差別を受け、ついに我王は初めての人殺しをしてしまいます。その後は、極悪非道の道をたどり、盗賊の頭へ・・・。しかし、ハヤメと良弁に出会い、徐々に生き方が変わっていきます。


我王が安らかに笑っているのは、この赤ちゃんの時の1コマしかありません。

もう、この1コマ見るだけで涙が滲む・・・。

 

 

我王は悪から善へと生き様が移り変わりますが、対して茜丸という青年は善から悪へと生き様が変わっていきます。

 

生きる苦しみと、喜びを描いた激しい作品です。

 

 

 

 

手塚治虫さんは漫画だけではなく、「ガラスの地球を救え―二十一世紀の君たちへ」という本も出しておられます。

 

以前、図書館で借りて読んだのですが、気になってアマゾンで購入。

もう20年前(1996年)に出された本なのですが、「現在」に当てはまります。

不思議です、20年前の本なのに・・・。

 

 

 

環境破壊、放射能汚染、今も無くならない戦争・・・。

 

 

 

手塚さんが本で繰り返し心配していた放射能汚染はチェルノブイリです。

その後、日本でチェルノブイリを越える原子力発電所の事故が起こるだなんて、あの世からこちらの世界を見て、どのように思われたことでしょうか。

 

 

ちょっと「ガラスの地球を救え」から、文章を抜粋していきます。

 

「放射能による食物汚染もさることながら、薬品による汚染も相当なものだといわれています。しかもその理由は大量生産して儲けを多くするためでしかない。生産性を上げるために人類の寿命を縮めるなど、本末転倒もはなはだしい」

 

「自然への畏怖(いふ)を無くし、傲慢になった人類には必ずしっぺ返しが来ると思います。今こそ、全地球的レベルで、超長期的、何百何千年という視点から、地球を考える必要があるのです」

 

「核戦争が起きようが、食品汚染で苦しもうが、みんな一緒なら良い、という人がいるけれどもとんでもないこと。みんな一緒になんか死ねない。一番小さいもの、胎児、赤ん坊、子供から滅んでいくことになるのです」

 

「むろん、世界の現実は厳しい。今の子供達や若者は、生まれたときから、人類を七回も滅亡させることの出来る量の核兵器がすでに地球上に存在していたのです。もう最初から自分達に何の責任も関わりもないところで、無残な暴力が圧倒的にのしかかっていたわけです。とてもたまったものではないと思います。やる気を無くすのも無理からぬことです。けれど、むごい現実を見据えつつ、それでもなお、いかに不動に見える現実も、何とか変えていく力が人間にはあるのだ、ということを、どうしてもっと大人は子供や若者に示してやることが出来ないのでしょうか」

 

「たとえ月面着陸を果たし、宇宙ステーション建造がどんなに進もうと、環境汚染や戦争をやめない限り、”野蛮人”と言う他ないのではないでしょうか。なんとしてでも、地球を死の惑星にはしたくない。未来に向かって、地球上の全ての生物との共存を目指し、むしろこれからが、人類の本当の”あけぼの”なのかもしれないとも思うのです」

 

「どんな国も、それぞれの”正義”を振りかざして戦争をしてきましたし、今もしています。”正義”とは実に便利な言葉で、国家の数だけ、あるいは人間の数だけあるとも言えそうです。そのごたいそうな”正義”の中身は、老人から無垢の赤ん坊にまでいたる理不尽極まりない殺人行為になることもあるということです。目の前でわが子や父母の死を見なくてはならなかった何百何千万の人々が居るのです。そしてまた、自らもまた、常に死に脅かされつつ、殺さなくてはならなかった兵士達。戦争で負った心の傷も、肉体の傷以上に深く、到底いやされるものではありません。こんなことも、もうぼくらの世代で永遠にうちどめにしたいと、切に願います。そのためにも、子供達が、健全な批判力を養えるような教育環境を整えることが、先決なのではないかと思われます」

(手塚さんは戦争経験世代です)

 

 

「生まれながらに、地球という天体を外から眺めながら育った子供たちは、その天体に棲む何十億という人間を、万物の霊長だとは見ないに違いないと思います。きっと他の無数の生き物と同等に、一介の生物として考えるでしょう。その地球を、乱開発したり荒廃させたりという人間のエゴイズムを、彼らは黙認はしないと思うのです。実際、アメリカの宇宙飛行士たちの多くが、月面から宇宙から、地球を初めて眺めることによって、いかにそれまでの自分の人生観が変わったかを述べています。科学の最先端にいた彼らが、神を感じたり、伝道者になったりもしています。
宗教はともかくとして、彼らが暗黒の宇宙にぽっかりと浮かぶ青く輝く地球を見たとき、そのかけがえのなさに打たれたのではないでしょうか。
大宇宙の孤独に耐えて、ガラスのように壊れやすく、美しい地球が浮かんでいる。戦争の爆弾の火や、緑が後退して砂漠化が進む荒廃ぶりなど、まるで自分が神のように眼下に見えてしまう衝撃。そして、人間の儚さが手に取るようにわかってしまうのに違いないのです。
宇宙の果てしない闇の深さに比べ、この水の惑星のなんという美しさでしょう。それはもう、神秘そのものかも知れません。
ひとたび、そんな地球を宇宙から見ることができたら、とてもそのわずかな大切な空気や緑、そして青い海を汚す気にはなれないはずです。
だから、僕は宇宙ステーションや月面で生まれ育った子供達に期待しているのです。
彼らは生まれながらに、宇宙での人間の小ささ、力を合わせていかねば生きられないこと、そして、人間が一番偉いのではないこと、眼下の地球に生きる動物も植物も人間も、みんな同じように生を全うし、子孫を生み続けていく生命体であるのだと、まっすぐに受け止めることができるように思います。
きっと彼ら未来人、そして宇宙人でもある子供たちは、新しい地球規模の哲学を携えて、地上の人々に警告を発することでしょう。
その時こそ、やっと人類は宇宙の一員になれるのかもしれません。」

 

「IF、もしも、ぼくが、わたしが宇宙からの眼差しを持ったなら、創造の力は光速を超えて、何万何千光年のはるかな星々にまで瞬時に到達できるでしょう。その想像の力こそ、人類ゆえの最高に輝かしいエネルギーなのです。」

 

 

宇宙ステーションから見た地球の画像。(グーグルマップで見れます)

 

 

 

宇宙から見た地球には、国境はない。

 

たった一つの同じ星で、みんな生きている。

 

だから、仲良く暮らして、地球を大切にしなくてはいけません。

 

 

 

それにしても、なんて綺麗な星なんだろう・・・。

 

 

傷つけてごめんなさい・・・。

 

 

生かしてくれて、ありがとう・・・。

 

 

 

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巣鴨の記事です。

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交通アクセス

巣鴨駅から1.2kmほど離れており、徒歩15分ほどです。
一番近いのが、都電荒川線の新庚申塚駅で、徒歩5分。400mです。
電車の乗り換えはヤフー路線などでお調べください。
總禅寺(そうぜんじ)は区立朝日小学校の近くです。

近くの宿泊施設

アパホテル巣鴨駅前。

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