【NHKスペシャル 2030 未来への分岐点】 第5回 「AI戦争果て無き恐怖」の放送内容

一昨年放送していたNHKスペシャル「2030 未来への分岐点」がすごく勉強になるので、紹介したいと思います。

 

  • 資源の大量消費
  • 人口爆発と食料問題
  • 加速する温暖化

飽くなき人間の活動は、地球の運命を左右し始めている。

さらに急速に進化するテクノロジーは使い方を間違えると大きなリスクをもたらします。

危機を乗り越える道筋を探る2030。

 

 

第5回  AI戦争 果て無き恐怖

自動運転や物流、医療など、私達の暮らしを大きく変え始めた人工知能「AI」。

このAIが戦争に利用されることで、19世紀のダイナマイト、20世紀の核兵器を凌駕した軍事革命が起きると言われています

10年後の2030年、世界の大国は相次いで軍の中枢にAIを配備する計画を行っています。

AIは戦争に何をもたらすのか。

人間の判断を介さず攻撃する、AIの果て無き脅威。

 

 

攻撃を受けたアルメニア兵士「塹壕に隠れていてもAI兵器からは丸見えでした。1,000人いた部隊はほぼ全滅しました」

 

 

さらにAIは、従来の戦争の概念を根底から覆すとも言われています。

それが「グレーゾーン戦争」。AIが武力攻撃無くして、いつの間にか相手国の国家機能を無力化し、支配下に置くのです。

 

 

国連軍縮部門トップの話「新しい技術を使った新しい戦争の在り方が仮に生まれたとしても、国際社会が発展させてきた紛争時のルール、それを維持していけるのかという、その点でも2030年が分岐点になっていくのではないかと思います」

 

AIと軍事の危険な合体は、未来の戦争をどのように変えるのか。

この先10年で危機を回避する手立てはあるのか。

新たな戦争の脅威は、私たちのすぐそばに忍び寄っています。

 

 

 

大学二年生のナナは、大学のゼミで、ある展示会に訪れる。
「企画特別展 戦争とテクノロジー展」
戦争は遠い世界の話だと思っていた。

 

戦争博物館展示室で、学芸員さんが解説する。
「戦争の歴史は兵器開発の歴史でもありました。飛行機や車、インターネットやGPS。実はこれらのケースは全て兵器に応用され、その中で発展してきました。」

学芸員の話を聞いていたナナのスマホに、リクルートサイトから通知がくる。

ナナは友人に「AIが個人の性格や適性を見て就職先を決めてくれるの」と話し、友人は「AIは賢いね」という。

そんなナナに話しかける一人の男性。
「お嬢さん、そのAIは戦争を大きく変えることになる。AIを利用した戦争に、あなたも巻き込まれるかもしれないのです」

 

 

天才物理学者スティーブン・ホーキング博士の警告
「私が怖れているのはAIが人間を凌駕して進化していくことです。それは人類の終わりを意味することになる。AIの自立兵器の開発は禁止されるべきです。AI兵器は明日のカラシニコフ銃になるだろう。」

 

カラシニコフ銃とはかつてロシアの軍事企業カラシニコフが作った自動小銃AK-47。
設計図が公開され、誰にでも扱いやすく、一丁15ドルから入手できるため、世界中の紛争地やテロ組織に拡散し、小さな大量破壊兵器と呼ばれています。
ホーキング博士はこのAK-47に例えて、AIの汎用性や技術拡散に警鐘を鳴らし続けたのです。

ホーキング博士の死から三年。今、世界は、その予言通りに進み始めています。

 

去年、ロシア国防相が開いた世界最大級の軍事見本市では、コロナ禍にもかかわらず世界中の1,200社が参加し、国内外から多くの軍関係者が集まりました。
自動で敵を識別し攻撃するAI兵器は、今、各国が開発を急いでます。

会場でひと際注目を集めたのが、あのカラシニコフ社で、発表したのはAIが自動的に自爆攻撃を仕掛けるAI搭載ドローン、通称「カミカゼ」。旧日本軍の特攻機になぞらえた通称で呼ばれています。

カラシニコフグループ責任者の話「カミカゼはとても安く、扱いやすい自信作です。」

価格は明らかにされていませんが、ピンポイントで攻撃できる巡航ミサイルの100分の1以下の価格とされています。

最も重要なのがAIの機能。

「すでに軍に配備されていますか」と中国の軍人に尋ねると「もうすぐです」との返事。
キラーロボットと言われるAI兵器は、すでに世界の紛争の主戦力になり始めています。

 

アゼルバイジャンとアルメニアの間の係争地オゴルノカラバフを巡る軍地衝突で、戦場の主役となったのは、AIを搭載した自爆ドローンでした。
少なくとも8種類、160機の軍事ドローンを海外から調達したアゼルバイジャン。
AIはアルメニア軍の戦車や大砲を見つけ出すとピンポイントで攻撃。戦車や軍事トラックなど450台以上を破壊したとされています。
さらにAIは塹壕に身をひそめる戦士や、戦闘の準備を始める兵士を次々と攻撃。野戦病院には自爆ドローンの被害にあった人が次々と運び込まれていました。

 

アルメニア軍兵士「頭上には三基のドローンが旋回していました。私は塹壕の中に隠れていましたが、ドローンは穴の中まで追いかけてきました。1,000人いた私の部隊はほぼ全滅でした。」

 

自爆ドローンの標的となり足に大けがを負ったアルメニア軍の兵士は、自国の政府から、
戦場にスマートフォンを持ち込まない。利用を禁止する。AIはスマートフォンの通信を探知して位置を特定し、攻撃する。」
との、警告が送られていたと言います。

自爆ドローンが敵の識別に利用していたのが、日常生活に欠かせなくなったスマートフォンでした。

 

 

ケガをしたアルメニア軍兵士「これまでに聞いたことがない攻撃でした。私たちは最も危険な自爆ドローンに対して、あまりにも無防備だったのです」

 

AIを搭載した自爆ドローンは発射後、数時間に渡って上空を旋回。敵のレーダーやスマートフォンの通信電波を探知すると、AIが位置情報や距離を正確に分析。標的が決まると、攻撃。

アルメニアの犠牲者は2,700人超にのぼりました。

アゼルバイジャンのAIドローン戦略は、これまでの紛争の構造を一変させました。

アゼルバイジャン軍の元将校、ヴェルディエフ・アダレットさんが取材に応じました。

長年、領地を巡ってアルメニアとの対立を続けてきたアゼルバイジャン。
これまで、大国ロシアを後ろ盾とするアルメニアにより、係争地の実効的な支配を許してきました。
この10年、アゼルバイジャンはアルメニアの三倍の国防費をかけ、最新の軍事ドローンを調達。そして、およそ30年ぶりに係争地の一部を奪還したのです。

 

アゼルバイジャン軍の元将校、ヴェルディエフ・アダレットさんの話
「ロシアが提供した兵器でも、我々の最新ドローンにはかないませんでした。私たちは最新のAI技術を駆使したことで、領土を回復することができたのです。」

 

今、AI兵器は世界の安全保障のバランスを不安定化させる要因にもなり始めています。

去年12月に行われたアゼルバイジャンの戦勝パレードに参加していたのは、トルコのエルドアン大統領です。

エルドアン大統領「トルコとアゼルバイジャンが助け合う限り我々は成功へと走り続けることになる」

 

アゼルバイジャンにAI搭載の軍事ドローンを提供したのはトルコでした。
10年以上前から国を挙げて先端技術への投資を続けてきたトルコ。
AI搭載のドローンなど軍事関連の輸出額は、この10年で三倍に拡大しています。
提供先は、情勢が不安定な国を中心に、少なくとも六か国に登っています。(ポーランド、ウクライナ、モロッコ、リビア、アゼルバイジャン、カタール)

トルコの軍事産業を統括する閣僚が取材に応じました。

 

トルコ防衛産業庁のイスマイル・デミル長官の話
「これまでトルコの兵器開発に強みはありませんでした。自分達で開発した戦闘機も潜水艦もありません。しかしこれからの本当の強さは、未来のテクノロジーこそにあるのです。AIをいかに使いこなせるかで、世界のパワーバランスが決まる時代に入ったのです」

 

人間の判断を介さず、自律的に攻撃するAI兵器。
大国が本格的な運用を開始する2030年が大きなタイミングポイントになります。

 

ロシアは2030年までに、地上戦を担うロボット部隊の創設を発表。
中国は同じく2030年に、AIの軍事利用で世界の頂点に立つと宣言しました。

そして世界一の軍事大国アメリカ。これまでベールに包まれてきた最先端が、数カ月に及ぶ交渉の末、公開されました。
フロリダにあるティンダル空軍基地は、空軍のAI化を最先端で進める拠点です。
数千時間かかるとされるパイロットの戦闘技術。ここでもAIは人間を凌駕しようとし始めています。
去年、エースパイロットとAIの空中戦が仮想空間で行われたとき、AIは非常に近い距離で銃撃をし、素晴らしい運動能力を見せ、AIパイロットがエースパイロットに勝ちました。

相手の動きを正確に予測することに加え、接近戦への恐れや、重力の負荷を感じないAI。エースパイロットを圧倒し、5回戦って一度も負けることはなかった。

2030年、アメリカ軍は一般兵士とAIパイロットの混成部隊を作ることを想定。

 

アメリカ軍兵士の話
「進化を遂げなければ次の戦争に勝つことはできない。AIを活用して適切な判断を下すことで、兵士の命を救い、被害を軽減していく。AIはそれを可能にしてくれるのです。」

アメリカ軍のAI戦略の近い将来を世界にPRする映像では、統合参謀本部など軍中枢部の判断にもAIを利用しようとしています。世界に展開するアメリカ軍の膨大なデータをAIがリアルタイムで処理。意思決定に必要な情報を瞬時に抽出させる計画です。

 

 

世界を股にかけて活躍するスプツニ子!さんは、先端技術が人類の未来に何をもたらすのか考え続けてきました。

アメリカ空軍の元高官で、去年までAI戦略に携わるウィル・ローパー氏にききました。

スプツニ子!さん「AIは将来の戦争に何をもたらすと思いますか。特に今、中国とロシアもAI開発を加速させていますよね」
ウィル・ローパーさん「人間とAIが組んで将来の戦闘でベストなチームを作ることが、アメリカのやり方です。AIは人間よりも早く判断を下し、はるかに短時間でデータを処理することができます。そこは大きな優位性です。一方で私が怖れているのは、AIの自立型兵器です。今は数千ドルで作れます。多くの国が持つことになれば、抑止力は大きく揺らぐでしょう。」

 

国連の軍縮部門トップである中満泉事務次長に話を聞いた。
「これまでAI兵器を規制する明確なルールが無かったため、国際的な合意を急ぐべきだと主張しています。新たな軍拡競争が、不安定要因を生み出す。その結果、いわゆる予測不可能な武力衝突が起こってしまう。これまで国際社会が発展させてきた紛争時のルールを再確認し、新しい技術を使った新しい戦争の在り方が生まれたとしても、それを維持していけるのか、その点でも分岐点になっていくのではないかなと思います」

 

 

場面はナナと博物館に戻る。
見知らぬ男性はナナに戦争について語り続けた。
「なぜAIの戦争が恐ろしいのか。わかりますか? ロボットが襲い掛かってくることではなく、戦争のルールがなし崩しに守られなくなってしまうからです。」

こちらへ、と不思議な部屋へ通されると、ナナの前に人類の戦争の歴史が現れた。

「人類は何度も戦争を繰り返してきました。その度に、愚かな戦争を二度としないよう、ルールを確立してきたのです。あらゆる非人道的な武器が使われてきた。悲惨な戦争でした。国家があらゆる力を動員した総力戦で、戦車や化学兵器などが使われました。その後、初めて戦争放棄を明記した国際条約(パリ不戦条約)を結び、防衛以外の目的以外で戦争をしないとルールを決めたのです。しかし、このわずか20年後、世界は再び地獄を見ました。人類は、第二次世界大戦を防げませんでした。そして、広島と長崎に世界で初めて原爆が使われたのです。その教訓から国家を超えて国際連合を組織し、軍事力に制限をかけて、国際社会で監視する体制を築いたのです。その後も戦争は無くなりませんでした。人類は、戦争を防ぐルールを作り続けました。戦争はしない、民間人は死なせない、なんとか戦争を抑止しようとしてきたのです。この先におけるAIを利用した戦争には、まだ明確なルールがありません。大国がAIを実戦配備されるとされる2030年までに新たなルールを作れなければ・・・。戦争の概念を変える事態すら起きてしまいます。日常の中に、知らぬ間に恐怖を植え付けていくのです」

 

 

2013年、ロシアの参謀総長ワレリー・ゲラシモフが打ち出した新たな戦略が世界に衝撃を与えました。

ゲラシモフ・ドクトリンと呼ばれた戦略は、従来の戦争の概念を覆すもので、未来の戦争は非軍事攻撃が4武力攻撃が1になり、相手国を弱体化させることが中心的戦略になると説いた。

 

2016年のアメリカ大統領選挙では、民主党のクリントン候補が不利になる情報にロシアが関与したのではないかと、CIAやFBIなどが報告書を出した。

ゲラシモフ氏「戦争のルールは大きく変わった。政治的・戦略的目的を達成するための非軍事的手段の役割が増大し、その効果は兵器の威力をはるかに上回る場合もある。大国同士の陸・海・空の武力衝突は、両国に大きな犠牲やコストを強いることになります。一方で、サイバー空間を介する攻撃を中心とする役割になるのが未来の戦争で、従来の枠組みに入らないグレーゾーン戦争と呼ばれています。この戦争に大きな役割を果たすのがAI。人間をはるかに凌駕するハッキング能力でサイバー攻撃を仕掛けることができる。そして、従来の戦争のように武力を行使することなく、様々な手段で相手国の機能をマヒさせ、支配下に置くのです」

 

 

 

2021年12月のABCニュース
「今回のサイバー攻撃は真珠湾以来の攻撃だという専門家もいます。これはアメリカのインフラが受けた攻撃で最大のものです」
2021年12月、アメリカの国防総省などが狙われた大規模なサイバー攻撃にもAIが使用されたとみられています。
盗まれたのは内部メールなど、膨大な機密情報。被害は財務省や国務省など、30を超す機関に及びました。
さらに五月にはアメリカの主要な石油パイプラインがサイバー攻撃を受け、稼働を停止。南部テキサス州からニューヨークまで9000kmにわたる地域に影響が出た。
五日間にわたって供給が停止され、価格が高騰。市民は混乱状態に陥りました。

 

バイデン大統領「ロシア政府が関わった証拠はないが、攻撃はロシアから行われており、彼らに責任がある」
一方ロシアはアメリカの主張を真っ向から否定してきました。
プーチン大統領「政府としてやったことはないし、やるつもりもない。ただ愛国者は正しいと思うことを勝手にやったかもしれない」

 

アメリカもこのグレーゾーン戦争に対応するために技術開発を加速させています。
先月、バイデン大統領になって初めて開催された米ロ首脳会談でも、サイバー攻撃が大きな焦点になるなど、新たな議題になっています。

 

国連の軍縮部門トップである中満泉事務次長さんの話
「国連のグテーレス事務総長が、もし仮に第三次世界大戦があるとすれば、それはサイバー攻撃から始まるんじゃないか。むこう5年10年、私たちの国際関係、国際協力の中でも、重要な課題の一つではないかと思っています」

 

 

グレーゾーン戦争では、相手国の社会の分断も重要な戦略とされ、デマ情報の拡散が攻撃手段になります。これを担うのも、AIです。

既に社会問題となり始めているフェイク動画。AIが自動で生成することも可能になり始めています。

インタビュアー「人間とコミュニケーションをとりたいと思うのはなぜでしょうか」
AIが合成した動画「人間は知的で魅力的な生き物だからです。」
インタビュアー「世界を征服したいと思っていますか?」
AI「いや、世界を征服したいわけではない」

 

将来的にはAIが状況に応じた膨大なフェイク動画を瞬時に作成し、デマを拡散することも可能になります。
人間が一度方向性をプログラミングしてしまうと、機械がグレーゾーン戦を自律的に激化させてしまうのです。

 

 

「私も昔は、正直、戦争なんて遠い国の話だと思っていました。でも、最悪なシナリオが起きてしまったんです。君たちはまだ間に合う。だからこそ、その現実を見て欲しいのです」
と、ナナに男性は言う。
ナナが連れていかれたのは2050年の某国。AIを駆使した戦争に負けた、男性の国だった。
大きなスクリーンではニュースキャスターがしゃべる。
「国会まで行われていたデモ行進に、暴徒500人余りが突入しました。」

ナナ「あなたの国で戦争が?」
男性「私たちの国では長年、隣国と民族的領土的対立を続け、外交による解決も行き詰まっていました。あれが攻撃だとは・・・、だれも気付けなかった。」

男性はポケットから、スマホを取り出し、映像を見せた。一人の男性が執務室で仕事をしている。
「これは私の国の大統領です」

一人の女性が執務室に入ってきて、大統領に声をかける。
「大統領、サイバー攻撃によって物流機能が破綻しました。このままでは、すぐに全国民への食糧供給が止まってしまいます」

大統領は「貧困層は放っておけ。食料は富裕層に回すんだ」と命令。

しかし、実際、こんな会話はされていなかった。
大統領は「まずは貧困層に食料が回るよう調達を急いでください」と答えていたが、フェイク動画で国民の不安をあおる心理戦で、改ざんされてしまったのだ。

人間の能力を超えたAIは国民のそれぞれの考えに合わせたフェイク動画を作って流した。
敵の狙いは、国民を混乱させ、お互いを疑心暗鬼にさせることでした。

フェイク動画の大統領が「富裕層の税率を70%に引き上げろ」「年金受給者は安楽死させてかまない」と語る動画がネットにアップされ、スマホで見て疑心暗鬼になる国民たち。

男性は、「私たちは、まんまと罠にかかったのです」とうなだれる。

ナナの前でスクリーンのアナウンサーが叫ぶ。
「速報でお伝えします。我が国のインフラが制御不能に陥りました」

男性「攻撃は国のかなめであるインフラにも行われました。電気、鉄道、金融システム、敵のAIは私たちの日常を奪っていきました。そのころAIが仕掛けたデマによる分断で、国内は騒乱状態になり、多くの死者が出ました。憎しみが一番の脅威になると、AIはプログラムされていたからです」

ナナ「同じ国の人同士なのに、誰も信じられなくなるなんて・・・・」

男性「国を完全に手中に入れた敵は、国民を徹底的にAIで監視しました(テントウ虫のような小型カメラが監視)。そして時に利益に反すると特定された人物には、虫のような機械から毒針を打ち込まれ、暗殺されたのです」

 

 

未来から現実世界に戻って来て、「こんな未来に、希望はあるんですか?」と問う男性。

ナナに「妻と、娘です」と写真を見せ、「娘はまだ19歳でした。二人とはもう二度と会えない。お嬢さん、あなたにはまだ未来がある。だから、覚えていてほしい。私が話したこと。」

未来から来た男性は、去っていった。

 

 

AIが人間の判断を超えて自立的に攻撃を行うAI兵器。そして、AIが日常と戦争の境目をあいまいにしていく、グレーゾーン戦争

最悪の未来を避けるために、私たちに何ができるのか。

AI兵器の規制を求めて、声を上げ始めた若者たちがいます。
「ストップ・キラーロボット」と名付けられたキャンペーンです。
現在、世界60か国の若者たちが、解決策を見出すために、独自の対話を続けています。

イギリスの大学生レイラさん「イギリスは近い将来、12万人の軍人のうち3万人をロボットにすると発表しました。戦争への敷居が下がってしまわないか心配です。」

フィリピンの医療従事者アリアさん「フィリピンで暮らす私のそばでもテロ攻撃がありました。もしAI兵器がテロリストに渡ったら本当に恐ろしいわ」

 

このキャンペーンで、ある人物の行動を大切な教訓としています。旧ソ連軍の将校スタニスラフ・ペトロフ氏です。東西冷戦期、核戦争の危機を止めた元将校です。
1983年9月26日、ソ連のコンピューターがアメリカからの核攻撃を誤って検知。直ちに報復攻撃が指示されました。しかし、ペトロフはコンピューターの指示には従わず、自らの判断で攻撃の中止を決めました
2017年に亡くなったペトロフは当時の自分の判断を振り返って、こんな言葉を残したのです。
「当時の判断は極めて難しい物でした。でもボタンを押していたら、みんながこうして元気に生きていくことができない。そのことだけはわかりました。自分は英雄でも何でもない。ただ人としての判断をしただけです。」

人にしか判断できない事とは何か。

若者たちはそれぞれの政府にAI兵器を規制するように働きかけています。

日本の大学院生の田辺アリンソヴグランさん「人間によるキラーロボットの有意義な制御を確保するためにはどうしたらいいか考えると、キラーロボットに関して日本政府に積極的な行動をとっていただきたいというのが、私達ユースの思いです」

国際社会も、新たなルール作りに向けて動き出しています。
2018年、国連ではAI兵器の規制を検討する国際会議が開かれ、125か国の政府代表や専門家が集まり、議論を続けた。

オーストラリア代表「人間の生死についてAIに意思決定を委ねることなどあってはなりません」

規制を求める声が相次ぐ一方で、開発を急ぐ国は法的な規制に反対しています。

アメリカ代表「早急な規制は被害を最小限に抑えてくれるAIの今後の可能性を阻害しかねません」

これまでの議論で、攻撃の判断は必ず人間が行うことや、開発や使用を巡っては国際人道法を尊守することなどが盛り込まれた国際ルールについては合意に達しました。
しかし、実行力を高めるためには強い法的拘束力が必要だという声も少なくありません。

 

 

スプツニ子!さん「国によって全くルールに対する考えとか姿勢って違うと思うんですよ。その溝を埋めていくためには、いったいどういうことがいま求められていると思いますか?」

国連軍縮部門トップ中満泉事務次長「武力行使の決定に関して、実際にどのような形で人間がコントロールしていく責任を維持していくのか。法的な規則を作っていくのか政治的な宣言、コミット面を作っていくのか。今までと性格が異なる兵器であるからと言って、いま私たちが持っている法体系を弱体化させてしまうことは決してあってはならないと、国連としては考えています」

 

一方、グレーゾーン戦争への対応は、ほとんど手が付けられていません。本来、多くのAI技術は暮らしの利便性を高めるために開発されています。民間利用と軍事利用の線引きは、あいまいなのです。
グレーゾーン戦争において、デマの拡散に使われるフェイク動画の拡散もその技術の一つです。

デビッド・ベッカムが協力し、AIがつくりだした動画では、ベッカムがいろんな国の言葉を流ちょうに話して、発展途上国の感染病(マラリア)の撲滅を訴えている。

技術そのものに規制をかけるのが難しい中、技術を使う国家の責任を問うことで、グレーゾーン戦争に対峙しようとしている。

ハッカーが独自に攻撃した場合でも、その攻撃の責任を国家に課すルール作りも急いでいます。

国連軍縮部門トップ中満泉事務次長「これまでの軍縮の議論とはかなり毛色の変わった議論、対応の仕方が必要になってくる。技術そのものを制限する、禁止するということではなく、どんな技術ができてきたとしても、国家の責任ある行動はどういうものであるべきかと当然、国家主体はしてはいけないこともそうですが、自分達の領土内でそのようなことを行うような非国家主体があった場合には、それをきちんと司法の中で追及していく。」

 

人類はダイナマイトや核兵器など、新たな技術が惨禍を招くたびに国際的なルールを作り、その責任を問おうとしてきました。

今、科学技術の進化は、人間が制御できない水準にまで達しようとしています。

その不可逆な潮流の中で、人としての判断とは何なのか。問われているのは叡智、人類の叡智なのです。

 

 

 

「2030 未来への分岐点」の再放送は未定です。

本はこちら。

 

皆さんは、報道の自由ランク付けをご存知でしょうか? 5段階に分類された国別ランクの中で、日本は180カ国中の71位で「問題あり」国に属していることがわかりました。日本は民主主義国G7の国際的リーダーとして認知されていますが、実際には報道の自由国際ランクは第三ランクに属するほど低く、発展途上国や独裁政権に近い国々と隣り合わせに位置しています。今回のテレビ放送は敵国からの情報操作を恐ろしく取り上げていましたが、時には自分達の政府とメディアも、私たち国民をだましたり、誘導するのだと、警戒しておきましょう。

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