【NHKスペシャル 2030 未来への分岐点】 第2回 「飽食の悪夢 ~水・食料クライシス~」の放送内容

去年放送していたNHKスペシャル「2030 未来への分岐点」がすごく勉強になるので、紹介したいと思います。

 

  • 資源の大量消費
  • 人口爆発と食料問題
  • 加速する温暖化

飽くなき人間の活動は、地球の運命を左右し始めている。

危機を乗り越える道筋を探る2030。

 

 

第2回 「飽食の悪夢 ~水・食料クライシス~」

今、人類が抱える様々な課題。

最新の科学は、2030年ごろに限界に達すると警告をしている。

第二回は「水・食料クライシス」。

今、世界中で食糧難が急増しており、国連は飢餓が拡大していると警告している。

その最大の要因は、先進国での食料資源のあくなき浪費。

日本で食べられるのに捨てられている食品を世界に分配すれば、世界で2億人分の飢餓を解消できるとされている。

過剰な豊かさが大地に負荷をかけている。

地球温暖化や土地の荒廃により、危機は深刻化していく。

 

 

2050年以降は人口が100億人を超えると言われており、食料資源の偏りは紛争の連鎖を生むことが明らかになって来た。

 

食料システム専門家は言う。
「人々は現在の食料システムを当たり前だと思っています。しかしそれは温暖化、安全保障、そして私たちの健康と根源的につながっています。2030年までに持続可能なシステムに転換させなければ、手遅れになってしまいます。」

 

国連・世界食糧計画 事務局長は言う。
「今、改革に着手しなければ飢餓の拡大が社会の不安定化を招き、大量の難民が発生します。飢えと社会の安定は繋がっているからです。なんとか先手を打たなければなりません」

 

 

私達は持続可能な社会を選択できるのか。2030年までの10年間をどのように歩むべきなのか。
水・食料クライシスが現実化しようとしています。

 

 

2050年の未来人から2021年の私たちへのメッセージ
「きっと君たちは後悔することになる。君たちのその飽食が食料システムを崩壊させるんだ。」

 

 

 

現在、世界各国に広がる新型コロナウィルスの脅威の陰で、地球規模で食糧難に陥る人たちが急増しています。国連が飢餓のパンデミックと呼び、8億人が飢餓状態にあると見られている。

一方、私達の暮らす日本は世界一とも言われる飽食を謳歌しています。

廃棄食品を豚の飼料に加工する工場が神奈川県相模原市にあるが、ここには毎日35トンもの食品が運び込まれる。

スーパーやコンビニから出た大量の食品、まだ十分に食べられる食品がほとんどで、賞味期限内のものも少なくない。

 

 

廃棄食品から豚の飼料を作る会社の人の話。
「常に365日24時間 お弁当とかオニギリがコンビニとかに並んでいますよね。このためにはどうしてもフルタイムで作り続ける。いつでも何でも食べられるところの裏側にこういった状態になる」

日本の食品ロスは年間612万トン。これは国連などが世界各地で行っている食糧支援の約1.5倍にもなる。

 

 

飽食と飢餓、今、世界は二つに切り裂かれている。

国連世界食糧計画・WFPのデイヴィッド・ビーズリー事務局長は、食糧危機の背景には大きな矛盾があると指摘する。
「今、地球上では世界のすべての人々を食べさせるために、十分な食料が生産されているということは大切な事実です。しかし現在の食料システムは持続可能ではありません。ひとたび何らかのショックが加わると貧しい人たちはすぐにその代償を払わされます。新型コロナはすでに脆弱だったシステムをさらに悪化させたに過ぎないのです」

 

 

2019年、全世界で生産された食料は26.7億トンと生産量は過去最高を記録した。これを世界の人口7794799000人で割ると、一人一日2,348キロカロリーと、生存に十分な量の食料を生産していた。しかし、世界の飢餓人口はパンデミックの六年前から上昇し続け、8億人が飢えている。

 

持続可能ではない脆弱な食料生産システムの一つに「肉食」がある。肉食は自然に大きな負荷をかけていることが分かった。

牛のエサに与えられている大量のトウモロコシは、牧草に比べて経済効率が高く肉の生産を増やせる。
牛肉1キログラムを作ろうと思うと、穀物は6~20キログラム必要だと言われている。

 

世界の食肉生産量は2億5000万トン。それを補うために、穀物の3分の1が食用ではなく家畜のエサになっている。

また、穀物を育てるには膨大な水が必要であるが、穀倉地帯に不気味な異変が起きている。アメリカのカンザス州には広大なトウモロコシ畑があり、地下水を利用して大量のトウモロコシを生産してきたが、近年、帯水層の枯渇が問題になっている。

 

 

カンザス州農業部水管理課のマイケル・メイヤーさんの話。
「今、帯水層の水は地表から100メートル下の地点にあります。ここ50年で60m以上下がりました。ここにはあと30m分の水しかありません。このままのペースではあと10年で地下水は無くなります。そうすると現在のように地下水に頼れなくなります。トウモロコシを育てる水はなくなるのです」

 

 

今、こうした地下水の枯渇は全世界で広がっていることが研究で分かってきました。

地下水がいつまでもつのかシミュレーションすると、限界が来るのは2030年から急増し、2050年では世界の七割の地域で地下水が枯渇する。

バヘニゲン大学環境学部・水文学のインゲ・デフラーフ助教授の話
「この調査では水の需要を2010年の水準で計算しました。それでもこのような破滅的な傾向が示されたのです。実際には需要は増加していきますから、現実の影響は予測よりももっと悪くなるでしょう」

 

 

今、全世界の水の7割は農作物の生産に使用されている。

肉の大量消費が水の大量消費を引き起こしている。

 

 

脆弱さがあらわになってきた食料システム。もう一つの問題は食料資源の大きな偏り。

牛肉1kgをつくろうと思うと、穀物は6~20kg必要で、その穀物を育てるのに必要な水は15415リットル。

つまり、牛肉1キログラムを輸入することは、風呂77杯分以上の水を輸入している計算になる(バーチャルウォーター)。

 

 

それぞれの食品のバーチャルウォーター。

 

 

世界のバーチャルウォーターの取引を表した地図では、1980年代から先進国を中心に取引が活発化、近年は発展途上の国も活発化。

 

南アフリカはワインの生産地であるが、近年、記録的な干ばつに何度も襲われ、ダムが干上がり、深刻な水不足に陥っている。
こうした中、ワイン生産者は大量の水の確保を進めている。

ため池を作り、水の囲い込みをすすめることでワインの生産と海外輸出をささえてきた。

南アフリカのワインメーカーの話。
「我々は干ばつで生産が落ちた時、どうビジネスを維持するか、ということに最大限の投資を行っています。自分の貯水池は自分の水なのです」

一方、多くの人が暮らすスラムでは深刻な水不足に陥っている。スラムに住む人たちは一日バケツ二杯の水しか使えないなど、厳しく制限されてきた。

水資源が枯渇する南アフリカから、世界各地へ輸出されていくワイン。ワイン一本の生産にかかる水は652.5リットル。
日本人が一本のワインを飲むたびに、南アフリカのスラムの人たちが飲む二週間分の水を消費することになる。

 

 

食料自給率が38パーセントの日本が各国から輸入するバーチャルウォーターは年間80兆リットル。これは日本国内での年間使用料とほぼ同じ。

 

専門家は今後水に象徴される食糧資源の偏りが、さらなる危機を招くと指摘している。

トゥベンテ大学水管理のリック・ホヘボーン助教授の話。
「このまま世界中で経済発展が続けば、2030年にはさらに水を多用するようになり、現在の危機をもっと悪化させることになるでしょう。しかし10年と言う時間はあまりにも短いものです。これまで水資源の管理は極めてローカルな問題としてとらえられてきました。しかし自由貿易の拡大で、世界中の水の枯渇を心配しなければならないのです。」

 

 

食料システムを巡る様々なひずみが大きくなったのは、1960年代に始まった「緑の革命」にある。
人類は急増する世界人口に対応するため、農薬・化学肥料を大量に使用することで、収穫量を飛躍的に増大させた。

単一品種の大規模栽培も進み、生産国と消費国が切り離されてきた。

その結果、世界の食糧輸出量の約80%を20か国ほどが独占する体制がつくられた。

その象徴が、肉の生産に使われるトウモロコシ。アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、ロシア、ウクライナの5か国が世界のトウモロコシ輸出量の約75%を占める。

グローバル化の伸展で中国、インドなどの新興国の経済成長が、この傾向により拍車をかけようとしている。

カカオ、パームヤシ、サトウキビなどの単一生産をする発展途上国に大きな負担がかかるようになってきた。

高級コーヒー豆の産地であるアフリカのウガンダでは、欧米資本が入った環境に配慮されたコーヒー豆を生産しているが、コーヒー農園の拡大によりこれまで自給してきた小規模農家が農地を奪われ社会問題となっている。

そして、単一生産の拡大で自給できなくなった人たちは、農地を求めてより広範囲の森林伐採に繋がった。

世界の温室効果ガスの約4分の1が、この食料システムが原因とされている。

 

 

更に今、この食料システムのひずみに拍車をかけているのが、先進国と新興国の飽食。
「おいしいものを、できるだけ安く、たくさん食べたい」という飽くなき欲求と、価格調整のために廃棄される大量の食糧。

世界で生産さえる食料の3分の1が廃棄されている。

これがまた、過剰な生産につながる。

 

 

食料システム研究の権威、クレイグ博士は、複雑に絡み合った問題を同時に克服していく必要があると語る。
「食料への欲求が人間の本質です。貧しい人は、食料の確保がより難しくなるでしょう。食料がひっ迫し価格が高騰しても豊かな人々は何も困りません。しかし多くの人々は究極の犠牲を払うことになるのです。そのため四つの点でシステムを改善していかなければなりません。まず既存の農地で持続可能な方法で生産性を高めていく。第二に、現在の食料システムは森林破壊の最大の原因となっているため、生態系や熱帯雨林を守っていく必要がある。第三に、食料需要を減らすために食品ロスや廃棄物を減らし食生活を変える必要があります。第四に、劣化した農地を回復し、自然を取り戻す必要があるのです」

 

 

 

2050年の渋谷では(イメージ)、金持ちが「たくさん買いものをしたね。ステーキを食べたいな」と買い物を楽しむが、路上では生活に困窮した人たちが座り込み、疲れた様子。

食べ物の値段が高い。コシヒカリは一マス6000円。

十万円のひとかけらのステーキを盗む人もいる。

「好きなものを食べられるのは金持ちだけさ」と、おばあさんは小さなイワシを孫と食べる。

「食料危機なんて遠い国の出来事。自分達は関係ないと思ってたんだけどねぇ」とおばあさん。

 

 

2050年の未来人からのメッセージ。

「食糧問題も2030年が分岐点となっている。2021年に生きる君たちは、地球の未来を決める重要な10年を生きることになる。君たちはあと10年で食料資源の偏りを解消し、飢餓を解決しなければならなかった」

 

 

 

今、国連は2030年までに食料のひずみをなくし、全世界で飢餓をゼロにすることを目標に掲げている。

2050年に人口100億となる世界。ただでさえ脆弱なこの世界に地球温暖化が加われば、100億人を養うことはますます困難になる。

すでにその端緒は表れている。世界各地でバッタが大発生し、食料を食い尽くしたが、これも温暖化が関係しているという。

農薬や化学肥料の使用による土地の荒廃は、大規模な砂嵐を起こす。地球温暖化で砂嵐が多発し、さらに土地にダメージを与える恐れがある。

 

ビーズリー事務局長は言う。
「私達は明らかに後退しています。新型コロナだけでなく地球温暖化や紛争の増加などで飢餓は悪化の一途をたどっている。今、改革に着手しなければ飢餓の拡大が社会の不安定化を招き、大量の難民が発生します。飢えと社会の安定は繋がっているからです。なんとか先手をうたなければなりません」

 

 

このまま問題を放置すると、世界はどうなるのか。その影響は先進国にも及んでいる。

イギリスの環境経済学の専門家が、大手銀行と共同で試算したフードショックという報告書では、温暖化が進むと数か国の穀倉地帯が同時に食料不足になる可能性が高まり、食料への不安が一か所の混乱から世界へ連鎖する(各国の輸出停止)という。

 

輸出停止で食糧暴動が起きる確率が高まるが、もっとも暴動が高まるとされているのがアフリカ。最悪の場合、危機は数年に及ぶとされる。

 

アングリア・ラスキン大学環境経済学アレッド・ジョーンズ教授の話。
食料価格の高騰は、抗議行動や暴動に繋がり、近隣諸国を巻き込んだ崩壊へと繋がっていきます。気候変動の影響が大きくなるにつれそのショックはさらに大きくなります。2050年までには世界的なフードショックが起こる可能性が高いのです。脆弱なシステムの中で世界の食料の10%から15%が失われるだけで、現在よりもはるかに大きな社会的混乱を引き起こすのです」

 

フードショックのリスクは既に顕在化している。
突如、国民の大半が深刻な食糧不足に悩まされたのは、かつて中東のパリとも呼ばれたレバノン。
レバノンの食料自給率は40%で、国民は豊かな食生活を享受していた。

しかし、レバノンの人々の暮らしが一気に暗転したのは二年前。国家財政の悪化が急激に進み、激しいインフレになった。
さらに去年発生した国の備蓄庫の爆発事故で、食料価格の上昇に歯止めがかからなくなった。
今、レバノンで多くの家庭が瀬戸際に追い込まれている。

レバノンのある家庭は、かつては海外旅行に出かけ、週に何度も外食をする中流以上の生活を送っていたが、レストランに行けず、穀物と野菜だけで一年以上過ごしている。肉と魚料理は食卓から消えた。

レバノンのスーパーは大量の食品であふれているが、食品は世界共通の価格で売買されているため、貨幣価値が下がると食品は値上げする。その結果、レバノンのほとんどの食品は以前の3倍の値段になってしまった。

国民の半数以上がこの状態になり、レバノンではデモや暴動が頻発し、社会不安が極限に達しようとしている。

 

 

 

現実化し始めたフードショック。豊かな人たちの危機への無関心が地球規模の破滅へつながる。

メリーランド大学のサファ・モーテ博士のシミュレーションでは、「資源の偏った社会は、ほぼ確実に崩壊する」ことが分かった。

 

サファ・モーテ博士の言葉
「私達の生活 人類の運命 そして地球の運命は、資源の偏りを理解しコントロールすることにかかっています。それは地球の資源を使いつくしてしまうかどうかを決める重要な問題なのです。」

 

 

2050年の未来人からのメッセージ
「地球温暖化による干ばつや洪水で食料供給をしてきた穀倉地帯が、同時に不作になった。僕たちが気づいた時にはすでに遅かった。自国の食糧確保に追われた国々は次々に輸出をストップした。繋がり過ぎた世界は同時に食糧危機に見舞われ、そして日本にも食料が届かなくなった。政府は備蓄が半年分あるから大丈夫と繰り返し言い続けてきた。けれど半年たっても元に戻らなかった。食料価格は高騰し続けた。紛争や暴動が世界で頻発した。そして食料生産と供給能力は、さらに下がっていった。日本はもともと自給率が低かった。僕たちは未曽有の危機の前に無力だった。」

 

 

 

どうすれば持続可能な世界を築いていけるのか。食料システムを根底から変えようとする働きが出てきている。
食糧問題に取り組むEATフォーラムでは、世界の政治家や研究者・企業が集まり、食料システムの改善を訴えている。

スウェーデンの国際開発担当大臣の言葉。
「資源が減少する中でどうすれば100億人を養うことができるのか。私達は飢餓を止め、すべての人々の健康を守り責任ある消費と生産を行う必要があります。」

 

提唱しているのはプラネタリーダイエットへの転換。先進国での浪費を止め、生産や流通の仕組みを改善し、システムの脆弱性を解消しようとしている。

特に注目を集めているのは、さまざまな分野の科学者の知見をもとに地球を守りながら100億人を健康的に養える食事。

プレートの半分は健康に良い野菜。肉は食べても良いですが量ではなく質を重視。

特に野菜はプレートの半分を占めており、穀物が四分の1、魚・肉・乳製品はあわせて1割程度。牛や豚は週に98g、鶏肉は週に203g。先進国は牛肉や豚肉を8割以上削減。欧米ほど肉を食べず魚を食べる日本でも7割削減する必要がある

不足するたんぱく質は豆類やナッツから採ることが推奨されている。

肉を生産するために使われていた大量の穀物は、貧困層にまわすことで、世界の飢餓問題のかたよりを解消。

 

 

今年、国連では食料サミットが初めて開かれる。生産方法・消費・食品ロスなど、食料システムの改革を道筋を見出そうとしている。

改革のカギを握る肉の消費の大幅な削減。
厳しい目標を新しい技術で乗り越える模索が出ている。

欧米で広がり始めた「人工肉」がそれ。
大豆やココナッツオイルが原材料で、スタンフォード大学の医学者らが分子レベルで解析し肉汁も再現している。主な原料が大豆の為、大量の穀物を必要とする牛肉よりも水の使用が87%減る。温室効果ガスは89%減らすことができる。

 

インポッシブルフーズのニック・ハラ上級副社長の言葉。
「私たちの理想は本物の肉と真っ向から勝負できるような、本当に挽肉のような製品を作ることです。私達は環境に配慮して世界の食料システムにかかわる問題を解決したいのです。」

 

 

日本でも人工肉を商品化する動きが出ている。全国に展開する大手ハンバーガーチェーン「バーガーキング」で商品開発が続けられている。

 

バーガーキングの野村一裕マーケティングディレクターの話。
「非常に日本人の消費者は繊細なんですね。今回チャレンジではあるんですけれどやってみることにしました。どんどんみんなで市場を広めていけばおそらくちゃんと牛肉よりは安くなるはずなんで、そこを目指したいですね」」

 

食料生産の現場も変わりはじめている。2050年に向けて人口が増えることが予想されているアフリカでは、農業人口の大半をしめる小規模農家がカギとなる。世界のカカオ生産を担ってきたプランテーションの広がるガーナでは、持続可能な農業に挑む農家が増え始めている。

中心となっているのはアメリカの大学院で学んだコフィ・ボア博士。

かつてガーナでは乾燥しやすい土地に適した農法が普及しておらず、欧米式の大量の農薬や化学肥料を使うプレンテーションに依存し、土地の荒廃が進み、貧しさからも抜け出せずにいた。

 

不耕起農業センターのコフィ・ボア代表の言葉。
「自分たちの土地で持続的に生産していくために何をすべきか分かれば、私達は飢えで苦しむこともありません。好きなものを十分生産することができ、余った分を売ることさえできるのです。」

 

コフィ・ボア代表が奨める不耕起栽培は土地本来の環境を守りながら、作物を育てる方法で、地球温暖化対策への高い効果が見込まれている。
不耕起工作では土地を深く耕さず、草をなるべくはやしたままにしておく。このことで土から水が蒸発しにくく、水や栄養分が土の中に保全される。森林の仕組みと同じ。

 

コフィ・ボア代表の言葉。

「地面が下草でカバーされているので、湿気が保たれるのです。土にはものすごく湿気があります。」

この栽培方法で化学肥料や農薬をほとんど使わず、30%以上増産することができた。
草を刈る時間も減るため、農家の労働時間も45%削減された。

自給自足できる小規模農家が増え、農作物を市場に出すことも可能になっている。

「我々は成長している」とアフリカの人たちは嬉しそうに言う。

 

 

 

先進国や新興国で続く食品ロス。
その膨大な浪費を飢餓の解決に生かそうと動き出した若者がアメリカにいる。ファームリンクプロジェクトは全米の150の大学と700人と連携している。

廃棄されそうな食料に関する情報が出ると、現場に近いメンバーが即座に対応、トラックなどを手配して改修し、食料が得られない人たちに配っている。

この日も捨てられる寸前だった10トン以上のジャガイモをすべて回収。

団体を立ち上げた一人のオーウェン・ドゥベック代表は、パンデミックのさなか食料供給システムに矛盾を感じ立ち上がった。
「多くの人が必要としている時に、同時に食料が無駄になるのは納得がいかなかった。何かしないといけないと思ったのです。」

これまでに回収できた食物は11,000トン。これはアメリカの総人口一日の食事の7%に相当する。
将来的にこのシステムを海外の若者に広げ、食料システム改革へつなげたいとしている。

 

オーウェンさんの言葉
「私たちはまずアメリカの食糧危機に取り組み、それを世界で通用するようにしたいのです。世界的な食糧危機こそ本当の課題だからです。」

 

 

この半世紀に積み重なった食料システムの巨大な歪み。
私達はその歪みをあと10年で解消していくことができるのか。

 

 

食料システム研究の権威クレイグ・ハンソン氏の言葉。
「例えば先進国の私達が(肉食などの)食生活を変え、さらに食品ロスと廃棄物を削減できれば現状でも世界で約6億ヘクタール、つまりインドの約2倍の広さの土地を食料生産のために無理に使わなくて良いことになります。人類は食料への探求によって一万年前の狩猟採集の時代から今日の文明を可能にしました。食料を求める人間の欲求は大きな変化をもたらします。私が若い世代へ伝えたいことは、次の食料への探求は持続可能なシステムを探求することだということです。私達は環境の制約の中で、持続的な繁栄の道を探さなければなりません。歴史的にこうした衝突は何度もありました。私たちは今、それに向き合う必要があるのです」

 

 

 

「2030 未来への分岐点」の再放送は未定です。

本はこちら。

 

 

追記・・・これはNHKの放送と何の関係もないことですが、食料危機問題を煽って「コオロギを食べろ。ウジ虫ソーセージを食べろ。ゴキブリミルクを飲め」とか変な方向に動かそうとしている人達がいるようです。昆虫食は新しいビジネスなので、利権を持っている人達は金儲けのために流行らせたいのでしょうが、コオロギは不妊や発がん性があると訴えている学者がいるようですし、ゴキブリミルクやウジ虫ソーセージは人間の食べ物ではありません。まずは食料廃棄問題に取り掛かり、野菜や穀物食へのシフトが大切だと、私は思います。

 

 

次は、「第三回プラスチック汚染の脅威」を紹介します。

 

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