見学記
今日紹介する、アミューズミュージアムは浅草寺の隣にあります。
2016年4月8日から2017年3月26日まで、企画展「BORO 美しいぼろ布展 ~人間はどれだけ貧しくてもおしゃれをする~」を開催しています。
私がボロに興味を持ったのは、ずいぶん前に、NHKだったか、TV番組を見たからでした。
この番組の再放送だったかな?
よく覚えていないのですが、津軽でボロ布、ボロ着を集めている、ボロをくれというと「そんなものはない!」と怒られたけれども、家族がいない時に、こっそりとボロを渡してくれた・・・と番組で言っていたと思います。(別の番組だったらごめんなさい)
青森は夫の故郷ですので、「へ~~。そりゃ寒いものね。布を大事にして、ツギハギして、モコモコに着込んでいたんだろうなぁ」と興味シンシンで見ていたのですが、家族がいない時にこっそりとボロを渡してくれた・・・というシーンに、大変胸が打たれたのでした。
すり切れ、ツギハギされたボロ布は、恥ずかしいものだから人前で出すものじゃない、と思われていたんですねぇ。
だから「そんなものはない!」と言うんですけど、後でこっそり渡してくれる。そこに、「大事に大事に使ってきたんだよ」、と温かい気持ちが見えたような気がしたのでした。
そのBOROを、ぜひぜひ見てみたい!
しかも、東京ミュージアムぐるっとパスを持っているので、1080円の入館料を払わなくて済む!
というわけで、行ってきました。
アミューズミュージアムの外観。
浅草寺の隣です。
アミューズミュージアムの一階は和雑貨をたくさん扱っていて、浅草寺観光に来た外国人達で賑わっていました。
美術館の入り口は、店の奥です。
もはや国際的な共通語となった「mottainai(もったいない)」。
ケニア出身の環境保護活動家であるワンガリ・マータイさんが、日本に訪れた時に「もったいない」という言葉を知り、世界に広めました。
階段で2階へ上がると、常設展「第一展示室BORO」。
アミューズミュージアムの展示の主役は、青森県生まれの民俗学者・著述家で、アミューズミュージアムの名誉館長である田中忠三郎さんが集めた、ぼろ布です。
江戸時代から何代にも渡り、青森の山村、農村、漁村で使われてきた衣類・布などがたくさん展示されています。
展示室に入るまでは、津軽三味線が流れる中、雪国の厳しさを思わせるような暗い照明の中で、シブイ展示がされているんじゃないかしら・・・と勝手に想像していたのですが、意外なことにポップな音楽が流れて、まるでセレクトショップのような、オシャレで明るい展示でした。
冬に室内で着る防寒着、丹前(たんぜん)。
いろんな種類の布が、丁寧に縫われています。
全てのBOROは、写真撮影OK、手で触ってOKです。
田中忠三郎さんの言葉
「私が出会った時は、BOROという思いがしませんでしたね。ああ、こんなに布きれを大事にして、粗末にしないで、いのちあるものとして大事にツギハギしたんだなと。感激しましたね。涙が出ましたよ。こんなにモノを大事にする人たちがね、この雪国、青森にいたんだと。」
田中忠三郎さんが、青森県内の村々を歩き回って40年間で集めた古い衣類は3,000点以上に上るそうです。
中でも、津軽・南部の刺し子着786点は国の重要有形民俗文化財に、紡績用具と麻布520点は青森県の有形民俗文化財に指定されているそうです。
こうやってマネキンに着せてみると、舞台衣装みたいに見えますね。
ドンジャと呼ばれた夜着。
夜は布団のような役割をしていたそうです。
寒い青森の夜。床にわらを敷いて、布を継ぎ足したボロ(ボド)を敷いて、分厚いドンジャの中、素っ裸で親と子供が抱き合って眠っていたそうです。
家族の眠りを包んだドンジャ。
一針、一針、こんなに丁寧に縫われて・・・、さぞかし温かいでしょうね・・・。
お母さんの家族への愛情が見えますね。
こんな変わった展示もありました。
・・・なんだと思います?
これは、ブーツです。
アザラシの皮と、鮭の皮を縫い合わせたもので、靴底の背びれが滑り止めになっていたそうです。
ほかに、犬の毛皮で作られたコート、民具の展示もありました。
縄文時代の服のレプリカ。オシャレですよね。この模様、大好きです。
青森県の三大丸山遺跡では、こんな服を着て記念撮影できます。
名誉館長の田中 忠三郎さんは、縄文遺跡の発掘調査も行っていたそうです。
こぎん刺しのタペストリー。
青森駅近くにあるアスパムで、こぎん刺しの体験ができます。
津軽の娘たちは、嫁入り前にこぎんを2~3枚刺して、嫁ぐときに持参したそうです。
田中忠三郎さんは、黒澤明監督の映画にも協力したそうです。
三階には第四展示室があり、2017年3月26日まで「BORO 美しいぼろ布展 ~人間はどれだけ貧しくてもおしゃれをする~」という、特別展が開催されています。
第四展示室前には、試着コーナーがありました。
特別展「BORO 美しいぼろ布展~人間はどれだけ貧しくてもおしゃれをする~」。
・・・と、ありました。
「消費文化の対極のアート!」
表現がうまいですね~。
第四展示室にも、たくさんのBOROがズラーーッと展示されているのですが、モモヒキが一面に並べられているのは、不思議な干物を見ているような気分で、おもしろかったです。
ここに写真を載せませんが、「キングオブBORO」とでも言いたくなるような、ものすごいBOROがありました。
あんなボロボロになっても捨てずにとっておいたのは、物を大事にする性格なのか、よほど思い入れがあるか・・・。
「物には念が宿る」、「物には心がある」と言いますが、あそこまでボロボロになると、確かに持ち主の何らかの気持ちというか、生き様というか、念というか、「宿る」のも不思議ではないなぁと思います。
とにかく、「大迫力のBORO」でした。
着物から迫力を感じるなんて、あまり無い経験だと思いますので、興味をもった方はぜひ見に行ってください。
足元には、BOROを着てポーズをとった写真がありました。
セクシーですねぇ。
三階には他に、黒澤明監督映画の「夢」で使用された衣装の展示がありました。
アミューズミュージアムは、6階建てのビルです。
エレベーターで上がれるのですが、階段の壁に「浮世絵」が展示されているので、階段で上がるのをオススメします。
昔は川を渡るのも大変だったようです。
私の父方のご先祖様は、こんな風に渡しの仕事をしていたらしいので、ふんどし一枚で頑張っていたのかなぁ。(冬がきつそう!)
浮世絵の一枚。眉毛のない江戸時代の女性。
江戸時代のお化粧で眉は重要なポイントで、だいたいの年齢と、既婚か未婚か、眉の形でわかるようになっていたそうです。
この浮世絵の女性は、つるつるの眉(引眉)なので、 江戸時代後期の既婚女性でしょうか?
アミューズミュージアムの最上階(6階)には、浮世絵シアターがあります。
「幻の浮世絵 ボストン美術館収蔵 スポルディング・コレクション」となっており、上映時間は40分。繰り返し上映されているので、いつ入ってもかまいません。
歌川広重、喜多川歌麿、葛飾北斎、東洲斎写楽、歌川広重の浮世絵の全9枚を解説してくれます。
私は歌川広重の、雨の浮世絵「あたけの夕立」の解説を見たのですが、絵師の広重が「背景に雨」と指示したところを、掘り師が200本もの線を、手前の雨と奥の雨に掘り分けて遠近感を演出していたというのは、驚きました~。
ちょうど、この前に、印刷博物館で浮世絵の解説を見ていたので、浮世絵というのは絵師だけではなく、掘り師と刷り師の、匠たちの熟練した技術によって上手いこと作り出されているんだなぁ・・・と関心しました。
アミューズミュージアムも、印刷博物館も、東京ミュージアムぐるっとパス対象施設ですし、一日にハシゴでまわれるので、併せて楽しむのをオススメします。
最後は、屋上に出て、スカイツリーと浅草寺の境内を眺めました。
ということで、次はお隣の浅草寺について書きたいと思います。
前回、【アミューズミュージアム】を取り上げましたので、今日はその隣の浅草寺(せんそうじ)について書きたいと思います。 浅草寺は東京観光の定番スポットですね。外国人観光客にも大人気です。 過去に何度かお参りに行ったので、夏と冬の写[…]
(この見学記は2016年です)
関連記事
→→東京・ミュージアムぐるっとパスを買いました。使用方法、使用可能施設について。
→→印刷博物館の記事はこちら・・・前回の記事です。
→→【三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき)】の記事はこちら・・・田中忠三郎さんも、縄文遺跡の発掘をしていた。
交通アクセス
メトロ銀座線、都営浅草線、つくばエクスプレス、東武線の、「浅草駅」から徒歩5分です。
電車の乗り換えはヤフー路線などでお調べください。
浅草寺の東端にある「二天門」のすぐ隣にあります。
車で行く場合、専用駐車場はありませんので、付近の有料駐車場を利用することになります。
料金について
一般1080円、大学生高校生864円、小中学生540円。
開館時間は10時から18時。最終入館は17時半まで。
毎週月曜休館。
ぐるっとパス対象施設です。冊子をまるごと持っていけば、常設展と企画展の両方に入れます。
こちらの施設は、デイリーPlusで、割引クーポンを入手できます。